1.光触媒の消臭、抗菌の原理
光触媒とは?
光触媒とは、光をエネルギーとして物質に科学変化を起こさせる媒体すなわち触媒です。
自然界では、植物の葉緑素による光合成が、光触媒です。
葉緑素は、光をエネルギーとして化学変化を起こさせ、二酸化炭素と水分から、デンプンと酸素を作り出します。
光触媒反応を起こす物質としてポピュラーなのが酸化チタン(Tio2)です。
酸化チタン自体は、光触媒反応を作り出しても減る事がありません。表面に光エネルギーを受けると強力な酸化還元反応を起こし、接触する有機物、雑菌などを炭素と水分に分解し無害化してしまいます。
酸化チタンとは?
光触媒反応を起こす素材としての酸化チタンは、白色の顔料や食品添加物として使われる極めて安定した物質です。
紫外線を吸収する事から、化粧品などに使われています。
光触媒の原理
酸化チタンの表面に光エネルギーが当たると、空気中の水分と酸素と反応し、OHラジカルなどの活性酸素を発生させます。
このOHラジカルは強力な酸化分解力を持ち、シックハウスの原因物質であるVOCなどの有機物や雑菌、インフルエンザウイルスなどを炭素と水分に分解し、無害化します。
OHラジカルは、消毒、殺菌などに使われる 塩素、次亜塩素酸などよりはるかに強い力で、環境浄化を行います。
*オゾンは、人間の嗅覚を麻痺させ、人体への影響が懸念されています。
2.可視光応答型光触媒の登場
酸化チタンだけでは触媒反応が起きない?
酸化チタンその物が光触媒反応を起こすには紫外線が必要でした。
紫外線の入らないUVカットガラスの室内や窓の無い居室での光触媒反応は絶望的でした。
そこで、可視光領域(人間の目に見える光の波長)で光触媒反応がおこる数々の改良が加えられて来ました。
本格的可視光応答型光触媒の登場
酸化チタンの分子構造に「何か」を加える事により、可視光領域での触媒反応を起こす研究が続きました。
窒素、銀、プラチナなどです。それでも充分な可視光領域に届く事が出来ませんでした。
そこに登場したのが、(独)産業技術総合研究所の「鉄ドープ酸化チタン」です。
可視光領域のちょうど中間にとなる570ナノメートルで反応し、従来品に比べ、蛍光灯下で5.9倍に効果が向上しました。
3.アパタイトが酸化チタンの弱点を克服
光触媒は、有機物を分解するため、定着させる機材そのものを分解してしまう欠点がありました。
屋外のトタンに手で触ると「白い粉」が付きますが、これがチョーキングと言ってトタンの塗料が酸化分解された結果です。
そこで、(独)産業技術総合研究所は、鉄型酸化チタンにアパタイト(カルシウム成分)を被覆させる事に成功し、コーティング面に直接酸化チタンが触れない事で、定着面の劣化を防ぐ事が出来るようになりました。
日本の特許
(独)産業技術研究所は、「鉄ドープ」および「アパタイト被覆」酸化チタンの開発で特許を取得しました。
4.ロータリー効果で、24時間消臭・抗菌を実現
アパタイトの吸着性能
5.最新型光触媒の能力
酸化分解反応
壁などにコーティングされた光触媒に光が当たると、触媒反応によってその表面に活性酸素が発生し、浮遊する臭いの元やウイルス、有機物質などを次々に分解していきます。
これまでの光触媒では、紫外線の入る窓際でしか効果が期待出来ませんでしたが、最新型光触媒は、室内の蛍光灯などの光エネルギーで、効果を発揮します。
内装での光触媒機能
6.光触媒のもう一つの機能
親水反応(水になじむ)
光触媒を建物の外壁やガラスにコーティングした場合、酸化チタンは、水との相性が良いため、壁面と汚れの間に水を入り込ませ、汚れを浮き上がらせます。雨天時に、汚れを洗い流す効果があります。
(セルフクリーニング効果)
外装での光触媒の機能
光触媒コーティングされた外装に、窒素酸化物(NOx)などが接触すると、酸化分解作用により無害化され、雨水などで流されます。
光化学スモッグの原因となる大気汚染物質を分解無害化すると同時に、防汚効果を発揮します。
この親水性を活用する事により、光触媒で、汚れない建物や看板が出来ます。
大規模建物では、外壁の洗浄コストが1/8に削減出来たという事例も出て来ました。
7.光触媒の用途
光触媒を利用する事により、大気汚染、水質浄化、院内感染防止、抗菌、消臭、防汚など幅広い用途に応用できます。これまでの光触媒は、紫外線の届かない屋内で効果が出ない欠点がありました。
そこで開発されたのが、最新型光触媒です。室内の光で触媒反応をおこし、室内の課題を解決して行きます。